自転車を漕ぎながら、空を見上げたら、ベッタベタだけどやっぱり思ってしまったんだ、
「この空はいつでも桔平と繋がってる。」。
そう思ったらなんだか胸が弾んでしまって、ハンドルから両手を放して空に手を伸ばす、バランスを崩した自転車は土手へとごろごろと転がる。
あ、そういえば今学校帰りで、制服で、スカートなのに、
こんなごろごろ転がったらパンツ見えちゃうじゃん。
なんてのんびり考えていたら、ごろごろは止まって、私は河原に身を投げ出してたんだ、まだ両手は空に向かってたなんて、気付きもしないで。


「会いたいなぁー。」
もうどれぐらい、温度を感じてないんだろう、絵文字はもちろん、「!」すら使わないシンプルなメールとか、たまにくれる短い電話とか、結局、全部が寂しさを増長させて。
ほどほどに元気なフリして、ほどほどに寂しいって言って、ほどほどに大丈夫って言って、いい子を演じた、心配かけないように、離れてても私の事好きで居てくれるように。
本音なんて見せれないよ、ドロドロのぐだぐだで、嫌われちゃいそうだよ、距離に負けそうだとか、毎日会いたいだとか、会えなきゃ死んじゃうとか、今すぐ来てよとか、言えないよ。
空に伸ばしっぱなしだった両手は、夕日を浴びてキラキラ光ってて、暖かくって、やっぱり寂しい。


空が繋がってたって、会えないじゃんか、
抱きしめてもらえないじゃんか、キスしてもらえないじゃんか。
半年に一回ぐらいしか会えないで、私が寂しくない訳ないじゃんか、平気で居れる訳ないじゃんか。
貰うばっかりであげる事が思いつかない愚かな私は、
やっぱり欲しい欲しいって繰り返し続ける、ただのだだっ子で。
小さく、ごめんなさい、って呟く、弱い自分で、負けそうな自分で、
欲しがってばっかりな自分で、ごめんなさい、って。


最後にしたキスはいつだろう、半年は経ったのかな、でも不思議、さっきの事みたいに、思い出せる。
空に伸ばしてた両手がだるい、って言い訳して、目尻に溜まった水を拭った、そしてまた、いい子を演じる自分に戻った、「寂しいけど、負けないよ、大丈夫だから。」半分の本音と、半分の強がり。


「…帰って、続きやらなきゃ。」
立ち上がって、芝まみれの制服をぽん、ぽん、とはたいて、また自転車にまたがって、走り出す。
「…いたたたた…。」
ごろごろと転がった身体は、思っていたより重くて、痛かった、
でも、結局、胸の中が、一番、痛かった。
さっきより少し暗くなった空、それでも、やっぱり、桔平と繋がってる事は、事実だって思って、
半分の本音を信じて、私は前に進む。


身の丈に合わない選択だった、周りはみんな反対した、両親は小馬鹿にした、
「あんたには無理に決まってる、どうせ途中で挫折するでしょ。」。
担任の先生は、苦笑いを浮かべて、「もうちょっと現実も考えてみたらどうかな。」なんて言った、
ちくしょう、ちくしょう。
桔平と、並んで歩きたいんだ、何が悪いんだ、ちくしょう。
でも、わかってる、ちゃんと結果出さないと、誰も、信じてくれないこと、
どんだけ悔しくたって、これだけは変わらないんだと思う。
玄関のドアを開けて、両親に上辺の挨拶をする、「ただいま、ごはん、あとで食べるね。」
そして私は部屋にこもる。
カリカリカリカリカリカリカリカリ、散らかる消しゴムのカスと、
目の前に飾る、桔平の写真、珍しく目元が優しく写っていて、一番のお気に入り。

今日の自己採点は、やっぱり、「まずまず」って言うのが精一杯で、夢にはほど遠い。
桔平と同じ東京は、現実の距離も、心の距離も遠い、遠すぎて、挫けそうになる、それを防いでくれるのは、やっぱり目の前の桔平の写真。

「がんばれ。」

桔平が、私に言った想像をして、心を奮い立たせる、「負けないよ、大丈夫だから。」、
今度は、全部の本音で。
桔平の写真が、ふっと笑った気がした、やっぱり空は、どこへでも繋がってる、そんな気がして、桔平の写真にキスを落として、またペンを走らせた。



スキニーピッグは空を飛ぶ

(合格おめでとう、頑張ったんだな)
(これからは、ずっと東京で一緒だね)

(…たいがうれしかよ)




special thx to
企画/マイリーダー 様
and you.