この部屋は、あまり女性の部屋らしくはないのだろう、と、今更ながら思った。
シンプルな部屋に、小説ばかりの本棚、サッカー選手のポスター、立てかけられたギター。
ベッドも、カーテンもグレーに統一されていて、やはり女性らしい要素はなく、それでも彼女らしいと思える。
ベッドの上で貴方は、寝息を立てて、無防備に眠りこけている、溜めに溜めた宿題をやっと片付けて、疲れてしまったのだろう。
柔らかな髪にふわり、と触れる、貴方は相変わらず、寝息を立てている。
こんなに無防備に、私と部屋に、もとい家に二人きりで居て、貴方は何も思わないのだろうか。
…私の好意にも、ずっと、気付いて貰えないのだろうか。
紳士的なのか、はたまた臆病なのか、私は貴方の髪以外に、触れる事が出来ずに。
可愛らしい寝顔や、短く整えられた爪や、細く長い首や、白い鎖骨や、触れたい場所はいくらでもあると言うのに。
「好き、です。」
呟いてみても、ただ空間に響いただけで、肝心の貴方には届きやしない。
一生、幼なじみで居る気か、と私に問うた、仁王くんの言葉ばかりが頭をよぎる。
10年以上、一方的に続いている片思いも、今年も平行線のまま、何事もなく。
立てかけられたギターを手に取り、見よう見まねで弦を弾く。
不協和音と言っても過言ではないそれに、私の想いが重なって、引きつった笑いがこみあげる。
以前、私の居る場で、このギターを使って、とても甘いラブソングを唄ってくれた事があった、と思い出す。
世間では有名な曲らしく、彼女の友人が隣りで口ずさんでいて、詩を心に留めようと試みていました。
目を瞑ると彼女の歌声で蘇る、一途に想い続ける、私の化身のような曲を。
ああ、愛しい。
そして奏でられた不協和音の源に、私はそっと口づける、それは冷たい金属の味で、やはり私の様だと思い、目尻の雫に気付かないフリをする。
稚拙な祈り
(いつか、貴方の指に)
special thx to
企画/キスで始まる123 様
and you.